お互い15、6の頃、ミッチとははじめて、生意気にも、スタジオミューシャンのバイトで会った。
ミッキー・カーチスさんのCMの仕事で、私はピアノ。ドラマーには、憧れのユージンという人が来ると思っていたので、がっかりしていたら、よく見ると、ミッチはすごくおしゃれっぽくて、私はちょっとだけ恋をした。
でも彼はピカピカの女の子をつれていた。仕事場にカノジョを呼ぶタイプだ。あーよかった。ひっかかってたら、今の私は無かったよ。
数年後、私の1stアルバムのセッションでキャラメル・ママのメンバーとして再会した。益々カッコ良かった。でも、現夫の方が良かったです。
ドラムセットに対してやや斜めに座り、口を一文字に結び、やはり相当斜めからスナップをきかす。薄く開いた目のはしで、そこにあっても無くても、スタジオのガラスか鏡に映った自分を常に見てる様だった。「んなわけないじゃない」というけれど。
エンディング近くなると、どんどん派手なオカズを入れるので、時々スティックを落としたが、そんなテイクがOKになった場合、曲がヒットするというジンクスがあった。みんなでせーので音を出すレコーディングがとてもなつかしい。
「30過ぎて、ドラムなんかたたいてたくないよ」と、いく度となくきいた。どれくらい本気だったのだろう。そして、80〜90年代の長いブランクがあった。それに伴うように私のレコーディングも打ち込みに移行していった。
10年前の「荒井由実コンサート」に、ひきずり出す様な形で、ミッチには参加してもらった。リハ初日、音が出た瞬間、泣きそうになった。あの構え、あのタイミング、何も変わってなかった。
再び音楽活動が始まってしまったことをミッチは後悔しているだろうか。もちろん私としては、何の責任を取る気もないけど。
でもこれだけは云える。私が知ってる世界の中で、私にとっては永遠に、ミッチがいちばん華やかなドラマーなんだ。
松任谷 由実